『逃げ恥』脚本家・野木亜紀子〜脚本家から読み解くドラマ①〜
こんにちは!ぷくこです。
以前から私は、ドラマを見るときに「脚本家」に注目するようにしています。脚本家によって、同じ題材、同じキャストでもドラマの面白さはグッと変わるからです。
この「脚本家から読み解くドラマ」シリーズでは、そんな脚本家さんたちの描く世界観の特徴を読み解きながら、面白いドラマを紹介していきたいと思います。
初回は、今話題のドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の脚本家、野木亜紀子さんを取り上げてみます。
脚本家・野木亜希子さんとは
経歴
当初は、映画監督を目指して日本映画学校に進学。その後、ドキュメンタリー制作会社に就職するも、現場には向かないのではないかと考え、脚本家を目指されたそうです。
フジテレビヤングシナリオ大賞に応募を続け、6年目の36歳の時に『さよならロビンソンクルーソー』で2010年の大賞を受賞。この作品がドラマ化され、デビューを果たされました。
これまでの主な作品
連続ドラマ
- ラッキーセブン(フジテレビ・2012年)
- 主に泣いてます(2012年7月期、フジテレビ)
- 空飛ぶ広報室(TBS・2013年)
- 掟上今日子の備忘録(日本テレビ・2015年)
- 重版出来!(TBS・2016年)
- 逃げるは恥だが役に立つ(TBS・2016年)
映画
- 図書館戦争シリーズ 図書館戦争(2013年)
- 図書館戦争-THE LAST MISSION-(2015年)
- 俺物語!!(2015年)
- アイアムアヒーロー(2016年)
野木脚本の特徴
野木さんは、原作モノのドラマを手がけることが多いです。
私自身は、漫画の実写化にはあまり期待しません。たいていの作品は、原作の世界観の表面だけ切り取って、人気のキャストを充てがうだけのものが多いからです。
でも、野木作品だけは違います!
どんな実写化でも、脚本家・野木亜紀子の名前を見たら期待をせずにはいられません。なぜなら、彼女の描く脚本には、原作へのリスペクトがあるからです!
原作者の描きたい世界観をきちんと読み取って、キャラクターの構築、エピソードの取捨選択をしているように感じます。また、原作にはないエピソードを付け足す場合でも、登場人物の内面をきちんと理解しているから、話に違和感がありません。むしろ、原作よりも、描かれる世界に広がりが出ることもしばしばあるくらいです。
野木さん自身は、原作モノの実写化について、こう語っています。
(1)小説や漫画という二次元の媒体と、ドラマや映画という三次元の媒体は、それぞれ違った特性を持っており、ベストな見せ方はそれぞれに異なります。また、漫画とドラマの一話分はボリュームがまったく異なるため、ドラマはドラマとしての再構成が必要で、それに合わせた改変が生じます。→
— 野木亜紀子@火10逃げ恥 (@nog_ak) October 10, 2016
(2)中でも最近強く思うのは「ドラマや映画は、見る側が時間をコントロールできない」ということ。映像作品の流れる時間の中では、あまりに画変わりがしないと飽きてきたり、動きのあるシーンが欲しくなったりします。ただ、見せ方が変わっても、作品の芯を変えないことを心がけています。→
— 野木亜紀子@火10逃げ恥 (@nog_ak) October 10, 2016
見せ方が変わっても、作品の芯は変えない。
その哲学が、原作ファンをも納得させる作品を作り上げているんだと思います。
原作者たちからも熱い支持
そんな野木さんのスキル・スタンスは、作品の原作者たちにも評価されています。「図書館戦争シリーズ」「空飛ぶ広報室」でタッグを組んだ作家の有川浩先生は、以前こんな風に語っていました。
野木さんが書かれた脚本は、原作にあってもおかしくないエピソードがたくさんあり、今回、ドラマオリジナルキャラクターも出てくるんですけど 「これ原作に出てきても違和感ナイナイ!」 と、いう感じで仕上げてくださるので、私としては忙しいときには 「野木さんの原稿なら読まなくても大丈夫!」 という OK を出してしまいます (笑)
ドラマのオリジナルキャラが出てきているにも関わらず、原作者が、「野木さんの脚本なら読まなくても大丈夫」とまで信頼しきっているってすごいことですよね!
胸キュンの達人
もうひとつ、野木脚本の特徴としては、観てる側が胸キュンするポイントをうまくついてくる!ということです。
まさに今放送中の「逃げるは恥だが役に立つ」でも「ムズキュン」というワードが飛び散り、毎回平匡さんとみくりの関係にムズムズキュンキュンしていますが、それは決してこの作品だけではありません。
「空飛ぶ広報室」の「2秒ください!」(←分かる人には分かる)や、「掟上今日子の備忘録」の最終回の「忘れたくないんです」と言って眠ろうとしない今日子さん(←分かる人には分かるw)に、どれだけキュンキュンさせられたことか。これらは全部、原作にある内容ではなく、ドラマオリジナルパートです。
以前、メインブログで最近のドラマではキュンキュンしないと書いたことがあるのですが、野木作品にはさせられっぱなしです。
空飛ぶ広報室や掟上のドラマオリジナル恋愛パートや、図書戦や俺物語を見た人から、よく胸キュンの名士(笑)とお褒めいただくけど、もしそう感じてもらえてるんだとしたら、それは私自身の胸キュンハードルが高いせいかもしれない。いつも「観客はそう簡単にキュンしねえぞ?どうする?」と思ってる。
— 野木亜紀子@火10逃げ恥 (@nog_ak) October 6, 2016
こう野木さん自身もおっしゃっていますが、毎回すでに枯れかけのアラサー(!)をも胸キュンさせる技術がすごすぎると尊敬の念を抱きます。
おすすめ作品の紹介
それでは、野木さんが脚本を担当された中で、おすすめの作品を紹介していきたいと思います。 それぞれのドラマ・映画と、原作を比べて見てみるのも面白いですよ。本当に原作の良いところを、うまく切り取っているなあと感心してしまいます。
逃げるは恥だが役に立つ
まずは、今話題のこちらの作品!
この作品、原作が面白いのはもちろんのこと、野木さん×ガッキーのタッグが最強であること、キャストが全員納得できる!こともあり、面白くならないはずがない!
特に、平匡さんを星野源さんが演じられたことが本当に大きかったと思います。たぶん皆、みくりよりも平匡さんを常に観てるんじゃないかと思います。平匡さんを、まるで実在する友人を見るかのように、応援したり、ヤキモキしたり、感情移入してしまいます。
また、演者もスタッフも楽しんで作っているのが伝わってきますよね!あの空気感の良さがいいんだと思います。最近のドラマは全10話で終わることが多いのですが、全11話まであるので、もう少し火曜の夜が楽しめそうです\(^o^)/
空飛ぶ広報室
脚本家・野木亜希子を最初に認識した作品です。また、野木さん×ガッキーが最初にタッグを組んだのもこの作品。
「空飛ぶ広報室」は、突然の事故でパイロット罷免(P免)となり、広報室に配属された元戦闘機パイロット空井大祐(綾野剛)と、夢だった報道局から情報局へ左遷され、広報室を取材することになったテレビディレクター稲葉リカ(新垣結衣)が出会い、お互いに成長していく物語です。
「なりたいものになれなくても、別のなにかにはなれる」ということをテーマに、仕事や恋愛、全てにおいて考えさせられるドラマ。鷺坂室長をはじめとした広報室のメンバーがまたよくて、こんな職場で働けたら最高だろうなあと思います。
有川浩先生の原作では、あんまり主役二人の恋愛については描かれていないんですけど、ドラマでは最終回まできっちり二人の関係について描かれていて、最初から最後まで完璧な作品です!
ちなみに、「空飛ぶ広報室」はAmazonプライムビデオで見ることができます!まあ私はDVD-BOX持ってるんですけどね!
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重版出来!
新米編集者の黒沢心(黒木華)が、漫画雑誌「バイブス」の編集部に配属され、漫画家さんを支える一人前の編集者となるべく奮闘する姿を描いた作品。出版業界を支える裏方の人々にスポットをあてて、一冊の本が読者のもとに届くまでに、どれだけの人が関わっているかを改めて知ることができます。
まず、主役の心ちゃんが前向きでひたむきでとってもかわいいです!見てると応援したくなります!また、オダギリジョー演じる五百旗頭さんが格好いいんですよねー!
個人的には、絵は下手だけど才能のある中田画伯(永山絢斗)に沼田さん(ムロツヨシ)に嫉妬して葛藤する第7話が神回でした!そして、その沼田さんが最終回にまた登場するのが視聴者の気持ちを分かってるなあー感じましたね(*´ω`*)
そういえば、野木作品に出てくる職場ってどれも魅力的ですよね。バイブス編集部も、広報室も、平匡さんの会社も。職場メンバーとの距離感が見ていて気持ちいいです。
アイアムアヒーロー
「アイアムアヒーロー」は、冴えない漫画家アシスタントの英雄(大泉洋)が、ゾンビのような食人鬼(ZQN)に侵された街でなんとか生き延びようとする物語です。
個人的に、長編漫画の映画化ほど難しいものはないと思っています。特に、バトルものや異世界ものは、どうしても映像がチープになってしまったり、エピソードを盛りすぎてしまったり、まとまりがない作品になってしまいがちです。また、時間の都合上、原作の設定を変えざるを得ない場合、それが中途半端だと原作ファンを怒らせることになってしまいます。
アイアムアヒーローも、そうなってしまうのではないかという心配がありました。原作は20巻超の長編漫画。しかも日本では受け入れられなさそうなゾンビもの。
それを、ここまで面白く出来るのが凄い!最後の大量ZQNとの闘いの盛り上がりには、ゾクゾクしました!
また、原作漫画ではけっこう気持ち悪くてクズみたいな主人公なんですが、映画だと情けないけど放っていけない愛されキャラになっていて、映画のほうが私は好きです。これは、野木さんの描き方もですが、大泉洋さんの力も大きいと思いますが。
まとめ
野木亜紀子さんの脚本の魅力、少しは伝わったでしょうか?
原作モノのドラマや映画が乱発される昨今、野木さんのような「作品の本質を見抜く」力のある脚本家さんがいると、原作ファンとしても安心できるんですけどね。
ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」もストーリーがいよいよ佳境ですし、これからも野木さんの描く世界から目が離せません!